仲裁判断

 

仲裁判断(2017年9月26日公開)


仲裁判断

仲 裁 判 断
公益財団法人日本スポーツ仲裁機構
JSAA-AP-2017-001

申立人         X

申立人代理人  弁護士 高松 政裕

         同  飯田 研吾


被申立人    公益財団法人 日本ハンドボール協会(Y)

被申立人代理人 弁護士 奥村 直樹

主   文

本件スポーツ仲裁パネルは次のとおり判断する。

1 被申立人が申立人に対して行った2017年6月10日付けの「ハンドボール指導3ヶ月の活動停止(平成29年6月10日~9月9日の期間 公式試合・行事出場停止)」との処分決定を取り消す。

2 仲裁申立料金54,000円は、双方半分の負担とする。


理  由

 

第1 当事者の求めた仲裁判断

1 申立人は、以下のとおりの仲裁判断を求めた。

(1)被申立人が申立人に対して行った2017年6月10日付けの「ハンドボール指導3ヶ月の活動停止(平成29年6月10日~9月9日の期間 公式試合・行事出場停止)」との処分決定を取り消す。(請求の趣旨1)

(2)仲裁申立料金は被申立人の負担とする。(請求の趣旨2)

2 被申立人は、以下のとおりの仲裁判断を求めた。

(1)申立人の請求を棄却する。

(2)仲裁申立料金は申立人の負担とする。

 

第2 事案の概要

 本件は、被申立人がF高等学校ハンドボール部(以下、高校を「本件高校」、ハンドボール部を「本件ハンドボール部」という。)の監督である申立人に対し、同部に所属していた部員複数名を指導する際、暴力行為があったことを理由として、2017年6月10日開催の被申立人理事会において下記の決定を行ったところ(以下「本件処分」という。甲1)、申立人が、被申立人に対し、本件処分に当たって弁明の機会が付与されなかったこと、本件処分の通告書(以下「本件通告書」という。甲1)に処分の前提となる具体的事実が書かれていないこと、また、処分の理由とされる暴力行為を行った事実もないことなどを理由として、本件処分の取消しを求めたものである。

 公益財団法人日本ハンドボール協会は、平成29年6月10日開催の理事会において、貴殿が所属する高等学校ハンドボール部部員に対して行った行為が、競技者及び役員倫理規程の第3条(禁止事項)「(4)セクシャルハラスメント、暴力行為、個人的な差別等人権尊重の精神に反する言動をとること」の暴力行為に抵触すると判断いたしましたので、第4条(処分規定)1項「第3条の禁止事項に違反した場合、競技者、指導者、審判員にあっては、競技会等への出場及び参加資格の一定期間又は永久の停止あるいはその処分を行う。」を適用し、“ハンドボール指導3ヶ月間の活動停止(平成29年6月10日~9月9日の期間 公式試合・行事出場停止)”とすることを決定いたしましたので、ここに通告いたします。

 

第3 判断の前提となる事実

 両当事者間に争いのない事実、並びに、証拠及び審問期日を経て容易に認められる事実は、以下のとおりである。

 

1 申立人について

 申立人は、本件高校の体育教師で、本件処分当時、同校の男子ハンドボール部の監督であり、監督として全国大会優勝、ナショナルチームでの指導経験も有しており、被申立人の登録規程に従い、同校の役員(監督)として登録されている者である。


2 被申立人について

 被申立人は、日本国内におけるハンドボール競技を統括する競技団体(スポーツ仲裁規則第3条第1項)である。


3 仲裁合意について

 被申立人「公益財団法人日本ハンドボール協会 競技者及び役員倫理規程」には、被申立人による処分に対する不服申立ては日本スポーツ仲裁機構に対して行うことができる旨の規定はないが、本件申立てに対し被申立人が答弁書においてスポーツ仲裁パネルによる審理に同意したので、申立人と被申立人の間に仲裁合意がある。


4 本件処分に関する経緯等

(1)通報

 2017年2月、被申立人においてコンプライアンス宣言、暴力撲滅のための相談・通報窓口設置がなされた(乙3)。

 2017年2月20日及び3月7日、この通報窓口に、本件ハンドボール部の選手Dの保護者で被申立人の専門委員でもあるE氏が、本件ハンドボール部において、申立人が限定された選手に対する体罰、モラルハラスメントを行っているとの通報を行った(以下「本件通報」という。乙5)。

(2)事情聴取等

 本件通報を受け、全国中学生大会の開催された2017年3月27日及び同月28日、被申立人の倫理委員会委員のG、H及びIは、通報者E氏から事情聴取を行った(乙6、乙11)。

 2017年4月12日、被申立人倫理委員会委員長代行Jが申立人に対し、体罰、モラルハラスメントについて投書があったとして、同月14日に被申立人事務所に来るよう連絡し、同月14日に被申立人事務所において面談が行われることが決まった。

 2017年4月14日、被申立人事務所において、申立人、J、被申立人事務局長K、弁護士Lで、聴取が行われた(乙7、乙25)。

(3)本件処分の決定

 ア 処分決定に至るまで

 2017年5月1日~11日にかけて、被申立人J、倫理委員会委員で意見交換が行われた後(乙22)、同月13日、被申立人の倫理委員会が開催され、被申立人が2017年2月に処分決定した事案(以下「山梨事案」という。)と本件はほぼ同等レベルとの判断がなされ、資格停止処分3か月の措置が妥当とする見解を理事会に審議することが決定された。

 2017年6月6日、申立人は二男を同行して被申立人事務局に来訪し、同年4月14日の面談の報告書等の開示を求めたが、開示はされなかった。

2017年6月5日に、被申立人に対するメールにより、本件ハンドボール部部員の保護者ら(Eを除く)から申立人による部員への体罰等はない旨、同月7日には手紙にて、同部部員(卒業生を含む)の保護者らから同旨の申入れがあった(甲3の1~2、甲4の1~2)。

 イ 処分の決定

 2017年6月10日、被申立人理事会が開催され、倫理委員会の結果が報告され、申立人による本件ハンドボール部部員に対する暴力行為があったとして、競技者及び役員倫理規程第4条(処分規定)第1項を適用し、ハンドボール指導3ヶ月の活動停止(平成29年6月10日~9月9日の期間 公式試合・行事出場停止)とする旨の処分を決定した。

 申立人は2017年6月10日に被申立人から電話で本件処分について告げられ、同月14日、本件通告書を受領した(甲1)。

 本件処分決定後の2017年6月13日、被申立人のIは学生Dに対し、申立人による暴力行為についてインタビューを行っている。


第4 仲裁手続の経過

 別紙・仲裁手続きの経過のとおり。

 

第5 争点

1 被申立人による処分の決定に至る手続に瑕疵があるか(手続の瑕疵)

2 申立人による暴力行為があったか(予備的主張、事実の誤認)

 

第6 本件スポーツ仲裁パネルの判断

1 判断の基準について

 本件は、国内競技団体である被申立人が行った申立人に対する処分という決定の取消しが求められている事案である。

 競技団体が行った決定の取消しが求められている事案において、いかなる場合に取消しができるかについて、日本スポーツ仲裁機構の仲裁判断の先例によれば、「日本においてスポーツ競技を統括する国内スポーツ連盟については、その運営について一定の自律性が認められ、その限度において仲裁機関は国内スポーツ連盟の決定を尊重しなければならない。仲裁機関としては、①国内スポーツ連盟の決定がその制定した規則に違反している場合、②規則には違反していないが著しく合理性を欠く場合、③決定に至る手続に瑕疵がある場合、または④規則自体が法秩序に違反しもしくは著しく合理性を欠く場合において、それを取り消すことができるにとどまると解すべきである。」と判断されている(JSAA-AP-2003-001号仲裁事案(ウェイトリフティング)、JSAA-AP-2003-003号仲裁事案(身体障害者水泳)、JSAA-AP-2004-001号仲裁事案(馬術)、JSAA-AP-2009-001号仲裁事案(軟式野球)、JSAA-AP-2009-002号仲裁事案(綱引)、JSAA-AP-2011-001号仲裁事案(馬術)、JSAA-AP-2011-002号仲裁事案(アーチェリー)、JSAA-AP-2011-003号仲裁事案(ボート)、JSAA-AP-2013-003号仲裁事案(水球)、JSAA-AP-2013-004号仲裁事案(テコンドー)、JSAA-AP-2013-023号仲裁事案(スキー)、JSAA-AP-2013-022号仲裁事案(自転車)、JSAA-AP-2014-003号仲裁事案(テコンドー)、JSAA-AP-2014-007号仲裁事案(自転車)、JSAA-AP-2014-008号仲裁事案(ホッケー)、JSAA-AP-2015-002号仲裁事案(ホッケー)、JSAA-AP-2015-003号仲裁事案(ボート)JSAA-AP-2015-006号仲裁事案(バレーボール)、JSAA-AP-2016-001号仲裁事案(自転車)、JSAA-AP-2016-006号仲裁事案(柔道))。

 本件スポーツ仲裁パネルもこの基準が妥当であると考え、本件においてもこの基準に基づき判断すべきものと考える。 


2 争点について

(1)争点1(手続の瑕疵)について

 申立人は、本件処分につき、事実調査が不十分・不適切であること、事情聴取に当たり事前に書面交付もなく聞き取りが行われるなど弁明の機会が付与されているといえないこと、理事会の議論や通告書において処分対象事実が明示されていないこと等の手続の瑕疵があるから本件処分は取り消されるべきものと、処分取消しを求めている。

 これに対し被申立人は、E氏の証言の他に事情聴取において申立人が有形力の行使をしたこと自体は認めており事実認定は合理的であること、事情聴取において弁明の機会を与えていること、処分対象事実については、申立人は事情聴取において明らかになった事実が処分対象と処分対象事実を了解していること、倫理委員会及び理事会における審議を経て処分決定しており手続の瑕疵はない旨を主張している。


(2)経緯等

 ア 本件の処分決定に至る経緯をみると、処分の対象となる事実の調査について、被申立人は、2017年3月27日及び同28日に、通報者E氏からの事情聴取を行い、その後、同年4月12日、Jが申立人に体罰等につき通報があったことで同月14日に被申立人事務所に来るよう連絡を入れ、同14日、被申立人事務所において、申立人、J、K、Lで事情聴取を行っている。

 その聴取において、被申立人は、具体的に学生A(現在は卒業)、学生B(現役部員)、学生C(現在は卒業)、学生D(現役部員)の名前を挙げるなどして、体罰があったか等について1時間程やりとりは行われている。その後、被申立人の倫理委員会での審議を経て、2017年6月10日の理事会において申立人に対する処分が決定されており、被申立人は、上記の処分決定に至るまでの調査の過程において、直接の暴力やハラスメントの被害者である選手からの事情聴取、E以外の保護者からの事情聴取は行っていない。


 イ 申立人の事情聴取の実施につき、申立人は、事前の書面交付がないことや呼び出しから聴取の実施まで近接していることを指摘している。確かに、Jから申立人に対し電話で2017年4月12日に連絡が入り、同月14日に聴取が行われており、聴取に当たって調査に関する事実の書面の交付等はない。しかしながら、被申立人が申立人に対し、同月14日の事情聴取後に関係者への報復の防止等の観点から被申立人・申立人において双方の秘密保持が話し合われているにもかかわらず、申立人に対する処分が審理される理事会の開催日前に、事情聴取で被害者として名前が挙がった選手(卒業生を含む)の保護者らから連名で被申立人宛てに本件通報の内容は事実と異なるといった趣旨の書面が届いたことなどからすると、被申立人が「犯人捜し」や「つるし上げ」、「口裏合せ」を憂慮し(答弁書、乙23、乙24)、迅速に対応するべく聴取等の手続を進めたことにも一応の理由があるといえる(甲3の1、甲4の1)。また、事情聴取においては、被申立人倫理委員と申立人との間で具体的に学生A(現在は卒業)、学生B(現役部員)、学生C(現在は卒業)、学生D(現役部員)の名前が挙げられるなどしながら、約1時間にわたってやりとりが行われていることや、一部、被申立人からすれば申立人が有形力の行使を自認したと捉え得る発言が多々あったことを踏まえると(乙7、乙25)、本件において、4月14日の事情聴取の実施において手続の瑕疵があるとまではいえない。


 ウ 本件の処分決定に至るまでに、被申立人は処分対象事実の調査と確定において被害者からの直接の事情聴取や保護者からの事情聴取を行っておらず、申立人は、被申立人の調査が十分でなく、処分対象事実が特定されていないと主張する。

 被害者や保護者からの直接の聴取を行っていない点につき、被申立人は、選手や保護者らからの事情聴取は、「犯人捜し」や「口裏合せ」、未成年者である選手の保護といった観点から断念せざるを得なかった旨を主張している。

 確かに、事実認定において被害者からの直接の聴取が必須とまではいえず、また、本件においては、上述のとおり、被申立人が犯人捜しなどを憂慮しつつ、未成年者保護に配慮しつつ手続を進めたことにも一定程度、理解できるところがある。

 しかしながら、指導者・監督・コーチなどによる選手への暴力、ハラスメントの問題においては、いかに被害通報における「犯人捜し」や「つるし上げ」、「口裏合せ」、保護者からすれば進学先への推薦といった意味で子どもを人質にされ、生徒や保護者が勇気をもって告発できない現状があるとしても、体罰や暴力、ハラスメントといったものの定義や概念には相当程度の幅があるのであって、不利益処分においては、被処分者が防御を行える程度に弁明の機会を付与すること、処分の対象となる事実を確定し、処分決定手続きを経て、処分の対象となる事実の告知を行い、処分が相当であることが不可欠の要件である。

 ところが、本件においては、被申立人の通告書に処分の根拠となる規定は記載され「暴力行為」に対する処分であることは記載されているものの、具体的事実の記載は全くなく(甲1)、本仲裁手続における主張立証を経てもなお、そもそも処分においてどの事実を認定し処分対象としたかが明確になっていないと言わざるを得ない。

 そうすると、倫理委員会及び理事会での審議がいかなる事実を処分対象として行われているのかが判然とせず、処分決定後の申立人への処分の対象の告知も、申立人が了解している事実の告知があったとの評価も困難と言わざるを得ない。また、被申立人は、本件処分が山梨事案と比較して相当であるとの主張も行っているが、そもそも処分対象事実が確定しているとはいえないとすると、本件処分の相当性の評価も困難と言わざるを得ない。


(3)学校の部活動における先生と生徒、監督と選手という圧倒的な立場の違い、生徒や保護者が体罰に対して声を上げることができない背景、とりわけ強豪校・伝統校と呼ばれる高校では、声を上げたものに対する「犯人捜し」や「つるし上げ」といったいびつな構造を否定できないところがあるにしても、本件処分における事実関係の調査は、拙速に過ぎた感を否定することができず、本件処分において倫理委員会や理事会においても処分対象事実が明確でないことを踏まえると、申立人に対する処分対象事実が特定されて倫理委員会や理事会での審議がなされたものとは認められず、申立人に対する処分対象事実の明示や告知があったとまでの評価は困難であると言わざるを得ない。以上の事実を総合的に勘案すると、スポーツ競技を統括する団体については、その運営について一定の自律性が認められ、その限度において仲裁機関は統括団体の決定を尊重しなければならないことを踏まえたとしても、本件処分の決定に至る手続には重大な瑕疵があり、「③決定に至る手続に瑕疵がある場合」に該当し、本件処分決定は取り消されるべきである。


(4)争点2(事実誤認)について

 争点2(事実誤認)には予備的主張であり、争点1の手続の瑕疵についての本件処分決定は取り消されるべきと判断したので、争点2は判断の必要を認めない。


第7 結論

1 結論 

 よって、本件スポーツ仲裁パネルは請求の趣旨1につき主文のとおり判断する。請求の趣旨2について申立料金の負担は、下記仲裁パネル付言で述べるところに鑑み、双方半分の負担とする。


2 仲裁パネル付言

 本件スポーツ仲裁パネルは、本件処分決定の手続の瑕疵を理由に本件処分を取り消した。

 しかしながら、処分対象事実に対する今後の更なる事実調査や再発防止策等が否定されるものではないことのほか、以下を付言する。

 被申立人が、健全なスポーツの発展に寄与するため(スポーツ仲裁規則第1条)、コンプライアンスの徹底や暴力の根絶に取り組もうとする積極的な姿勢は極めて重要であるものと高く評価することができる。また、学校の指導者や監督が進学先への学校推薦や就職などにおいて、いわば絶対的立場にあり、多くの保護者や生徒は体罰等に対して声を上げることを諦めていることが十分に窺われる。個人の競技記録が評価の中心となる個人競技種目とは異なり、ハンドボールのような団体競技においては、ベンチ入り選手の決定や試合における選手起用などは指導者の専権であり、監督・指導者の絶対的な権力構造が確立されている場合が多いのではと思慮される。そのようななか、被申立人がE氏の通報に基づいて、申立人に対し積極的にヒアリングへと進めたことも、しかるべき対応であったといえ、実際に保護者のほぼ全員からのメールや手紙が来たような事態からすれば、迅速な調査が必要で、時間をかける調査では支障があったことは、一定程度、首肯できるところがある。そして、より調査を尽くすことで本件処分に必要な事実認定を行うことができたことも窺えるのであり、今後は、より十分な調査や手続保障について留意しつつ、一層、暴力の根絶に向けた取組みを推進していくことに期待するところである。

 生徒の保護者においては、監督・指導者からの絶対的な影響力を気にするあまり、保護者間で「犯人捜し」のようなことが行われたことも十分推認され、本件を契機に、そのような姿勢を子ども達のためにも変えていくことを期待したい。また、学校関係者においても、本件の部活動において体罰や暴力行為による指導が窺われなかったのか、上記のようなことが行われる土壌を座視していなかったのかを改めて認識してもらう必要がある。

 一方、申立人においては、被申立人による事情聴取の際に申立人自身が「しっかりしろって足でおしりをやったことはあります。間違いなくあります」(乙7、乙25)といった発言をしているなど、一定程度、体罰や暴力行為による指導を窺わせる発言を多々行っている。

 また、被申立人が事情聴取のため保護者に接触を試みても拒否されたり、関係者が関わりを控えたいと言っているとの情報が入ったことや、保護者会を中心とした「犯人捜し」や嘆願書作成が行われたのではと窺わせる異様な状況すら生じていることを踏まえると、申立人においても、暴力的指導や体罰、ハラスメントを疑われるような強権的な指導、不適切な指導、いわゆる旧来の体質が抜け切れていなかった可能性も極めて高い。

 申立人は、自ら認めているとおり(本人尋問)、20172016年11月、高体連(県高 等学校体育連盟)から贈呈された新人戦2位の賞状を、選手らの面前で、破り捨てるという指導を行っている。このような破り捨て自体、高体連(県高等学校体育連盟)に対する冒涜とも言わざるを得ず、さらにはそれを生徒の前で見せつけること、優勝しか価値がないかの如き示威行動は、決して学校教育におけるスポーツの指導としてあってはならないことである。

 

 このような、監督、指導者と選手、生徒、保護者の力関係の格差や進学・進路への絶大な影響力を背景とした指導、優勝しか価値がないかのような勝利絶対主義の指導は、即刻改めるべきであり、申立人のような指導が各選手の個性や可能性の芽を摘んでいなかったか、スポーツを通じた生徒達の人格の健全な成長を阻害することはなかったか、今後のハンドボール界の健全な発展のためにも、真摯な反省と改善が必要と思われることを付言する。

以上

2017年9月8日

スポーツ仲裁パネル

仲裁人 福田 弥夫 

仲裁人 棚村 政行 

仲裁人 今井 和男 


仲裁地:東京


(別紙)

仲裁手続の経過

1.  2017年7月4日、申立人は、公益財団法人日本スポーツ仲裁機構(以下「機構」という。)に対し、「仲裁申立書」「証拠説明書(1)」「委任状」「財団法人日本ハンドボール協会懲罰規程」及び書証(甲第1~7号証)を提出し、本件仲裁を申し立てた。

2.  同月5日、機構は、スポーツ仲裁規則(以下「規則」という。)第15条第1項に定める確認を行った上、同条項に基づき申立人の仲裁申立てを受理した。

3.  同月11日、機構は、両当事者からの意見を参考に、仲裁人として棚村政行及び今井和男を選定し、「仲裁人就任のお願い」を送付した。

 同日、棚村政行は仲裁人就任を承諾した。

4.  同月12日、今井和男は仲裁人就任を承諾した。

5.  同月13日、機構は、第三仲裁人(仲裁人長)として福田弥夫を選定し、「第三仲裁人(仲裁人長)就任のお願い」を送付した。

 同日、福田弥夫は第三仲裁人(仲裁人長)就任を承諾し、福田弥夫を仲裁人長とする、本件スポーツ仲裁パネルが構成された。

6.  同月14日、被申立人は機構に対し、「答弁書」「証拠説明書(1)」及び「委任状」を提出した。

7.  同月18日、申立人は機構に対し、「申立人主張書面(1)」を提出した。

 同日、被申立人は機構に対し、書証(第1~8号証)を提出した。

8.  同月21日、本件スポーツ仲裁パネルは、審問の日程、出席者及び証人尋問申請及び事案の明確化に関する釈明事項に関して、「スポーツ仲裁パネル決定(1)」を行った。

 同日、被申立人は機構に対し、「被申立人主張書面(1)」及び「上申書」を提出した。

9.  同月26日、機構は、仲裁専門事務員として置塩正剛を選任し、「仲裁専門事務員就任のお願い」を送付した。

 同日、被申立人は機構に対し、「被申立人主張書面(2)」「証拠説明書(2)」及び書証(乙第9,10号証)を提出した。

10.  同月27日、申立人は機構に対し、「申立人主張書面(2)」及び「尋問申請書」を提出した。

 同日、被申立人は機構に対し、証拠(音声CD)(乙第11号証)を提出した。

11.  同月28日、被申立人は機構に対し、証拠(音声CD)(乙第25号証(乙第12号証が後ほど書証番号を変更されたもの))を提出した。

 同日、置塩正剛は仲裁専門事務員就任を承諾した。

12.  同月31日、申立人は機構に対し、「申立人主張書面(3)」「証拠説明書(2)」及び書証(甲第8号証)を提出した。

 同日、被申立人は機構に対し、「ご連絡」と題する書面及び「人証申請書」を提出した。

13.  同年8月4日、本件事案における置塩仲裁専門事務員の就任について両当事者に諮ったところ、期限までに特段異議が出されなかったため、置塩仲裁専門事務員の就任が確定した。

14.  同月8日、本件スポーツ仲裁パネルは、審問の詳細及び事案の明確化に関する釈明事項について、「スポーツ仲裁パネル決定(2)」を行った。

15.  同年8月14日、被申立人は機構に対し、「証拠説明書(3)」及び書証(乙第12~24号証)を提出した。

16.  同月15日、本件スポーツ仲裁パネルは、証人の採用及び審問当日の本人尋問・証人尋問の時間配分に関して、「スポーツ仲裁パネル決定(3)」を行った。

17.  同月16日、申立人は機構に対し、「申立人主張書面(4)」を提出した。

同日、被申立人は機構に対し、「証拠説明書(4)」及び書証(乙第26号証)を提出した。

18.  同月18日、東京において審問が開催された。

19.  同月21日、本件スポーツ仲裁パネルは、最終主張書面の提出期限、本件事案の審理終結及び仲裁判断の作成期限に関して、「スポーツ仲裁パネル決定(4)」を行った。

20.  同月25日、申立人は機構に対し、「申立人主張書面(5)」及び「審問期日 意見陳述」と題された書面を提出した。

 同日、被申立人は機構に対し、「被申立人主張書面(2)」及び「被申立人の意見」と題された書面を提出した。

 同日の経過をもって、本件スポーツ仲裁パネルは、「スポーツ仲裁パネル決定(4)」に基づき審理を終結した。

以上

 

以上は,仲裁判断の謄本である。

公益財団法人日本スポーツ仲裁機構

代表理事(機構長) 山本 和彦




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