「実践編」で述べたような代表選手選考やドーピング規則違反・不祥事への関与による資格停止処分などをめぐり、競技者とスポーツ団体との間には様々な紛争が発生することがあります。しかし、スポーツ紛争の多くは法律上の争いとは言えないため、裁判所を通じた紛争解決は難しい場合があります。
そこで、スポーツをめぐる様々な争いを公平・適正かつ迅速に解決する場を提供する目的で日本スポーツ仲裁機構(JSAA)が2003 年に設立されました。JSAA は公益財団法人日本オリンピック委員会・公益財団法人日本体育協会・公益財団法人日本障害者スポーツ協会の3 団体からの拠出金等により運営されている独立した機関です。2009 年4 月より一般財団法人となり、2013年4月からは公益財団法人化しました。
JSAA では3 つの仲裁手続を用意しています。
これらの手続きの主な違いは、対象となる紛争、当事者、手続費用の点にあります。
また、まずは中立的な第三者のもとで話し合いを行い、事実の確認や和解をしたいという場合には調停手続も用意しています。
仲裁は仲裁人により仲裁判断が下されると、当事者を拘束する効力が発生しますが、調停は調停人が解決案を提示したとしても、その解決案を必ずしも受け入れる必要がない点で異なります。
「ドーピング紛争に関するスポーツ仲裁規則」による仲裁手続方法については、「覚えておきたい! ドーピング仲裁ガイド!!」を参照してください。
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「スポーツ仲裁規則」による仲裁手続方法、「特定調停合意に基づくスポーツ調停(和解あっせん)規則」による調停手続方法については、「アスリートのためのスポーツ仲裁・調停ガイド!!」を参照してください。
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裁判とは、国の司法機関である裁判所が法律を基準として判断する手段であり、紛争解決手段として代表的なものであると言えます。しかし、裁判は一般的に判決まで長期間を要することが多くそれに伴い費用もかかってしまいます。また、裁判官は法律の専門家ではあっても、必ずしもその紛争に関連する分野の専門家ではありません。 一方で、仲裁と調停は紛争の解決を当事者が選択する独立公正な第三者にゆだね、その判断によって紛争を解決する合意に基づく紛争解決手段であり、専門性を有する第三者を当事者が選択することができます。また、仲裁と調停は当事者間の合意があることを前提としているため、当事者の意向に合わせ柔軟に手続が進められるため、迅速な紛争解決が期待できます。裁判に比べ、「当該分野に通じた高い専門性」「迅速性」「低廉性」を有する点で仲裁や調停による紛争解決は利用しやすい紛争解決手段であると言えます。